青果流通業界の働き方改革4 事例紹介

京都の仲卸・万松青果 特集
大型モニター(右)を設置し、他の部屋を映し出すことで一体感を演出

 今回は、事務所のレイアウト変更により社員同士のつながりを深め、業務改革に取組んでいる、京都市中央卸売市場の仲卸・万松青果の事例を紹介します。

(「やっちゃばジョブ」を運営する農経新聞社の『農経新聞』から、2020年2月3日の記事を再構成したものです)

京都・万松青果 業務改革へ「つながり」深めるレイアウトに改装

この記事のポイント

◎「日本一綺麗な仲卸」をめざし、家族主義と年功序列制の給与体系を取り入れ、理想の職場を追求。

◎業務改革の一環として、事務所を開放型オフィス環境にリニューアル。個々の机をなくして超大型昇降テーブルを採用。

◎「午前中は着席しない」「事務スタッフは分散配置」「営業員は必ず誰かの隣に着く」というルールを設けることで、業務効率をアップしつつ社員同士のつながりを深める。他の人の仕事を把握できる効果も。

◎若い世代の入社も増え、有給休暇の取得も進んでいる。


 京都市中央卸売市場の万松青果(中路昌則社長、年商12億円)は、スタッフ29人全員が正社員の「家族主義」で、給与体系は「年功序列制」を導入し、理想の職場を追求している。

 同社の顧客は飲食店や宿泊施設など。
 「日本一綺麗な仲卸」をめざし、店舗や事務所の掃除は毎日全員で行う。午前11:30から商品を片付け、7台のショーケースを拭き、床をモップ掛け。
 翌朝には商品を検品して陳列するが、すべてにプライスカードを付け、価格を確かめる手間を削減。顧客の買いやすさと省力化を両立している。

 データや連絡事項はクラウドで共有。
 過去15年分の売上げを品目別、顧客別、営業担当者別などに見ることができ、顧客に喜ばれた事例、クレームなども閲覧できるようにしている。

必ず誰かの隣で業務 午前・午後で席替え

 このほど、業務改革の一環として2階事務所をリニューアル。仕事内容に応じて働く場所を自由に選択する「アクティブ・ベースド・ワーキング」の考えのもと、個々の机をなくした。
 それまでは営業と事務が2つの部屋に分かれていたが、構造上撤去できなかった中央の壁の一部を除き、開放型にした。

 個々の机の代わりに、高さ調整が可能な「超大型昇降テーブル」で全員が業務を行う。
 忙しい午前中は着席できないよう腰の高さにする。営業員は必ず誰かの隣に着き、一人きりで業務を行うことを防止している。
 午後はテーブルの高さを下げて着席するが、必ず席替えを行い、午前とは別の場所に移動する。

 こうした「午前中は着席しない」「事務スタッフは分散配置」「営業員は必ず誰かの隣に着く」というルールを設け、業務の効率を高めるとともに、毎日違う人の隣に着くことで社員同士のエンゲージメント(つながり)を深めている。
 他の社員の業務を把握できる効果もある。

 また、テーブルが2部屋にまたがっているため、各部屋に大型モニターを設置し、互いの部屋を映し出すことで一体感を造り出している。

事務所をくつろげる空間に 私物の収納はロッカー設置

 事務所は「森のラウンジ」をテーマに改装した。
 とくに「木漏れ日ラウンジ」は、大きな樹の上にあるダウンライトの光が木の葉で少しだけ遮られ、やわらかい木漏れ日がテーブルの上に落ちてくる。
 高い背もたれに囲まれて、くつろげる空間となっている。

 事務所内にはBGMを流す。選曲は全員が交代で担当し、音楽のジャンルを毎日変えるようにしている。

 個人の座席がなくなったため、私物などの収納場所に全員分のロッカーを設置した。
 ロッカーには「文書入れ」があり、各自への郵便物や伝言事項を差し込んでおくこともできる。逆に、本人が受取ったかどうかも一目でわかるようになっている。

平均年齢35.8歳 有休取得も促進

 社員の平均年齢は35.8歳と若く、今年度は20歳代が3人入社した。
 これまでにも働き方改革と、それを後押しする業務内容の共有化に務めてきた。今では繁忙期を除いては月曜、火曜には必ず誰かが有給休暇を取っている。
 年2回の社員旅行には家族も参加することが多く、2階事務所には旅先での写真が数十枚飾られている。

 中路和宏専務は「年功序列は所得が安定し、社員が安心して働くことができる」とする。
 そのためには業務改革などによる経営改善が必要だが、今回の改装でさらに理想を追求していく。

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