青果流通業界の働き方改革3 事例紹介

業務の見える化を推進する高松青果 特集

 今回は、高松市中央卸売市場の青果卸・高松青果の働き方改革の事例を紹介します。
 仕事が属人化し、担当者が“全部自分で抱え込んでしまう”状況を変えるべく、業務の「見える化」に取組み、残業時間の削減をめざしている事例です。

(このサイト「やっちゃばジョブ」を運営する、農経新聞社 発行の『農経新聞』2019年7月8日の記事を再構成したものです)

高松青果 業務の見える化推進 残業削減へ「分荷基準」

この記事のポイント

◎創立50周年に交代制で社員旅行が実現できたことをきっかけに、全員に年1回の5連休取得を義務付けた。

◎専門コンサルを招いてプロジェクトチームを立上げ、働き方改革に着手。

◎「業務の見える化」に取組み、「分荷業務」に的を絞って課題解決を進める。

◎品目ごとの分荷基準を作り、皆で共有するのが当面の目標。


 高松市中央卸売市場の青果卸、高松青果(齊藤良紀社長、2018年度取扱高=109億円)では、19年から「LOOKプロジェクト」として業務の見える化、とくに「分荷基準」の策定に取組んでいる。

 同社では16年度に設立50周年事業として、7班に分かれて5日間のハワイ旅行を行った。
 その間の業務は社内の他の班で代行し、クレームがないよう引継ぎを万全にしたうえ、取引先にも周知し、「旅行中は絶対に取引先からの電話を取らない」ことを徹底した。

 結果クレームは全くなかったため、翌年からは全員に毎年1回、5連休(休市の水曜~日曜)の取得を義務付けた。
 さらに創立55年目の21年には、「55ホリデイ」として全員が年1回、8連休の取得をめざしている。

専門コンサル招きプロジェクトチーム

 齊藤社長は「働き方改革への取組みと求人活動の上でも、これはやる価値がある」として、業務の標準化の中で見える化をめざそうとした。
 しかしその一方で「(社内体制構築の)素人には手に負えない」として、元々富士通で見える化による顧客業務改革支援を手掛けていたコンサルタントの妹川聡氏(中小企業診断士)に協力を依頼。女性営業員の水井祐子氏(野菜第2部課長)がプロジェクトリーダーとなった。

 まず18年11月から19年1月にかけ、野菜2部(3チーム)での実施をめざし、妹川氏と水井課長は2部全員(11人)および連携するスタッフ全員から、見える化や働き方などについてヒアリング。
 次に2部全員で「あるべき姿」「課題」などを検討した結果、当面の対象を、時間外労働になりがちな「分荷業務」に絞った。

 同社の営業員の勤務時間は午前5時30分~午後2時だが、実際にはそれ以外に午後4時~7時の間に1~2時間、自分で担当品目の分荷業務を行うことが多い。
 グループ内や部内では時期により担当品目がピークの者、比較的手があいている者がいるため、互いにカバーすることもできる。しかし、「手伝ってもらいたいが、教える手間を考えれば自分でやった方が速い」ため、自分で抱えたままになっているという。

 その「教える手間」の最たるものは、「入荷が少ない時に、どう振り分けるか」。
 少ない時ほど顧客は皆、商品を確保したいが、オーダー量から一律の割合で減らして分荷することは、まずない。
 会社全体としての売上げ、利益への貢献度が大きい大口顧客のほか、「自分の品目についてはいつも買い支えてくれる」「新人の時に世話になった」などもあり、「どの顧客を優先するか」で悩む。

 ただ、ヒアリングや検討の結果、「この基準は各々の担当者の中でも漠然としたもの。また同じ2部の中でも、同僚のやり方がわかっていなかった」(水井氏)ことがわかった。

入荷が少ない時の優先順位を策定へ

 このため7月~9月の3か月で、入荷情報、オーダー量、分荷の優先順位など、「分荷に必要な情報を見える化」したうえ、分荷の優先順位を検討していく。
 妹川氏は「(データ上の)会社の基準と現場の感覚をどう組み合わせて基準を作るかがカギ」としている。

 齊藤社長は「まずは現場の感覚を優先し、当面の目標として品目ごとの基準を作りたい」としたうえで、「先輩社員のフォーマットがあるということは、新人育成の上でも有効。完全なものは無理だとしても、少しずつでも改善に向かうことは決して無駄ではない」としている。

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