いろどり社会保険労務士事務所
代表・内川真彩美氏
選ばれる会社になる 働き方改革のポイント6
前回は、システム導入のポイントを紹介しました。お伝えした通り、システム導入は「目的」ではなく「手段」です。導入後、業務改善のツールとしていかに使いこなせるかが重要です。
今回は続きとして、導入したシステムを定着させるためのポイントを、8年半IT企業に勤務していた経験も踏まえて紹介します。
システムを入れるだけ入れて「あとは頑張って使ってね」では、使われないシステムになりかねません。システムの選び方だけでなく導入後のフォローもとても大切です。
システム定着のためのポイント
1. 説明会など質疑応答の機会を設ける
2. 導入のメリットや成果を説明
3.「使いたくない人」には理由を聞いて一緒に解決
1. 説明会など質疑応答の機会を設ける
1つ目は、使い方の説明会を設けることです。
慣れるまで、システムの使い方の質問は多くなります。せっかく業務効率化のためにシステムを導入したのに、質問対応する方の負荷が大きくなるようでは意味がありません。
社内のITレベルによりますが、まずは使い方の説明会を設けると良いでしょう。
説明だけではイメージがわかないことも多いので、PCやスマートフォン等の機器を持ち込んでもらい、一緒に使ってみる形式も有効です。
また、「パスワードを忘れた」のような想定される質問には、対応方法をまとめた「よくある質問集(FAQ)」を作成し、誰もが閲覧できる場所に設置すると、質問対応の時間も削減できます。
2. 導入のメリットや成果を説明
2つ目は、システム導入の目的を理解してもらうことです。なぜシステムを導入したのか、何が解決されるのかを丁寧に説明します。
システム導入後にその目的がどれほど達成できたのかも公表しましょう。例えば、「残業時間が減った」とか、「3時間かかった業務が2時間で完了するようになった」などです。
システム利用のメリットが明確で、成果を実感できると、使い続けるモチベーションに繋がります。
3.「使いたくない人」には理由を聞いて一緒に解決
3つ目は、システムを使おうとしない人と対話をすることです。システム化に抵抗を覚える人がいたら、なぜ使いたくないのか理由を聞きましょう。
システムは、1人でも使わない人がいると、逆に効率が悪くなることが多いでからです。例えば、社内連絡用にチャットツールを導入したのに「絶対に使いたくない」とメールを使う人がいたら、相手によってツールを使い分ける必要があり効率が悪くなってしまいます。
私の顧問先で、給与明細を紙での配布からWeb閲覧に変えた企業があり、「給与明細は紙でほしい」と利用を拒否し続ける人がいました。
そこで、「Webページを印刷すれば紙で出力できます。もちろん会社のコピー機を使ってもらっていいですし、やり方は教えます」と伝えると、「確かにそれなら紙で給与明細を出力できる」と、すんなり同意してくれました。
障壁を聞き解決策を一緒に考えたことで、システムを使ってもらえた好事例です。
目的が明確だとシステム導入後も定着しやすい
さて、立派なことを言っているように聞こえるかもしれませんが、かくいう当事務所もシステムの導入には失敗し、気付くと使わなくなっていることも多いです。
そのケースには明確な共通点があります。それは、周囲が使っていて口コミも良いのでとりあえず使い始めたときです。前回と今回でもポイントに挙げた「どの問題を解決したいのか」という導入の目的が全くない状態で使い始めているので、使う場面がほとんど訪れず、導入したことさえ忘れてしまいます。
逆を言えば、どの場面で使えそうか、どの問題を解決するのに使えそうかが明確なケースは、システムの導入後も定着しているように感じます。
筆者紹介 いろどり社会保険労務士事務所 代表・内川真彩美氏
特定社会保険労務士。約8年半、IT企業でシステム開発に従事した後、社会保険労務士として開業。現在は前職の経験を活かしながら、企業の制度設計や働きやすい組織作りの支援を行っている。企業ウェブサイトや雑誌などへの執筆、講演多数。