システム導入で「属人化」解決、業務改善へ

働き方改革のポイント5 コラム

いろどり社会保険労務士事務所
代表・内川真彩美氏

選ばれる会社になる 働き方改革のポイント5

 前回は、年次有給休暇の取得率を上げるための手法を紹介しました。
 しかし、誰かが休むと仕事が回らない環境では取得は難しいため、並行して「業務改善」を進めることも必要です。

 今回は、業務改善の方法の1つでもある「システム導入」のポイントを、8年半IT企業に勤務した経験も踏まえて解説します。

情報の共有や分析をしやすく、繰返し作業が楽に

 まず、システム導入のメリットを3つ挙げます。

メリット1. 同じ情報を「誰もが」「どこからでも」「リアルタイムで」確認できる

 システムの導入により、コミュニケーションが速くなり、属人化も防げるため、業務スピードは上がります。

 例えば、年次有給休暇の管理をシステム化した企業があります。
 従業員が自ら年次有給休暇残日数をリアルタイムで確認できるようになったため、人事部では残日数問い合わせによる業務がゼロになりました。

メリット2. 情報の分析がしやすくなる

 例えば多くの勤怠システムでは、自動で残業時間や休暇取得状況を抽出できます。
 そのため毎月役員会議で残業時間の報告が必要な企業では、システムの分析ページがそのまま報告資料に使えて、資料作成の手間がなくなりました。

 また、個人や部署ごとの情報も簡単に出せるため、社内の問題も見つけやすくなります。

メリット3. 繰り返しの作業が自動化できる

 例えば当事務所では、毎月同じ内容の請求書であれば自動作成されるシステムを使っています。
 設定日になると請求書が何枚も完成しているので、月末の業務が非常に楽になりました。

 このように、システムの利用は業務改善との相性が非常に良いです。
採用難・人材不足の昨今では、業務をシステムに移行し効率化することが必須といっても過言ではないでしょう。

導入する際に気を付けたいことは

 ここからは、システムを導入する場合に気を付けるべきことを3つ紹介します。

ポイント1. どの問題を解決したいのかを明確にする

 システム導入は「目的」ではなく、社内の問題を解決するための「手段」です。システム導入の目的を説明できるようにしておきましょう。

ポイント2. 必須機能だけでなく妥協できる機能を考える

 システムを使う場面は会社によって違うため、既存のシステムでは自社ニーズが完璧に網羅されているものはないと思った方が良いです。

 自社ニーズをすべて網羅したシステムを求めるなら、既存システムではなく一から作ってもらうしか選択肢はありません。
 既存システムから選ぶなら、機能の取捨選択をしないといつになっても導入することはできません。

ポイント3. トライアル期間で使いやすさを確認する

 いくら便利な機能でも、画面が見にくかったり、動きが遅かったり、使いにくいものでは定着しません。多くのシステムではトライアル期間が設けられていますので、必ずその期間にシステムを使い倒しましょう。
 このとき、実際にそのシステムを利用する人にも使ってもらうことがポイントです。

 また、どんなシステムでも初めから使いこなせる人はいません。
 例えば、皆さんもスマホを新しくしたときに、初日ですべての機能を使いこなせるわけではなく、使いながら次第に機能を覚えていくわけです。

 システムもそれと同じで、まずは一定期間使ってみることを推奨します。

次回は導入したシステムを定着させる方法を解説

 とはいえ、従業員のITレベルに差があったり、仕事の仕方を変えることに抵抗を持つ方がいるような場合、いくら良いシステムを導入したとしても定着しないこともあります。

 そこで次回は、導入したシステムを定着させるためのポイントを紹介します。

筆者紹介 いろどり社会保険労務士事務所 代表内川真彩美氏

内川真彩美氏
内川真彩美氏

特定社会保険労務士。約8年半、IT企業でシステム開発に従事した後、社会保険労務士として開業。現在は前職の経験を活かしながら、企業の制度設計や働きやすい組織作りの支援を行っている。企業ウェブサイトや雑誌などへの執筆、講演多数。

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※この特集は、「やっちゃばジョブ」を運営する農経新聞社の『農経新聞』掲載記事を再構成したものです。

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