従業員の有休取得 工夫で取得率アップへ

働き方改革のポイント4 特集

いろどり社会保険労務士事務所
代表・内川真彩美氏

選ばれる会社になる 働き方改革のポイント4

 前回は、働き方改革のはじめの一歩である、現状分析のポイントを紹介しました。
 分析の結果、社内の問題としてよく出てくるものの1つが「年次有給休暇(有休)の取りにくさ」です。そこで今回は、休暇を取得しやすくなるヒントを紹介します。

この記事のポイント

◎年10日以上有休が付与されている従業員には、年5日の取得が義務付けられている。

◎有休を取得しやすくするためにすぐにできることは、①理由を不問にする②上司も積極的に取得する

◎労使協定や就業規則を改訂すれば、有休の「1時間単位の取得」や「会社が指定した日に取得してもらう」ことも可能に。


勤続期間と出勤率の条件をクリアすれば有休の対象者に

 そもそも年次有給休暇とは「一定期間勤続した労働者に対し、心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するために付与される休暇」のことです。

 大きな特徴は「有給」である点で、取得日の賃金は減額されません。
 また、週1日勤務の従業員や正社員以外の従業員も、勤続期間と出勤率の条件をクリアすれば対象者になります。法人かどうかや企業規模、従業員数、就業規則等の有無は問いません。

 前述の通り、年次有給休暇は「心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するため」のものですので、原則は丸1日の取得とし、半日単位や時間単位での取得は任意となっています。

 2019年4月からは、年10日以上 年次有給休暇が付与されている従業員に対して、年5日の取得が義務付けられました。年5日取得できていない従業員1人につき30万円の罰金が科されるほど、企業にとって厳しい制度です。
 昨年、この件で書類送検された企業がニュースにもなりました。

「理由を不問に」「上司も積極的に取得」で有休を取りやすく

 さて、皆さまの企業ではどのような取組みをしているでしょうか。ここからは、休暇取得がしやすくなる取組みのヒントを紹介します。

 まずは、社内制度を大きく変えずともできることを2つ紹介します。

 1つ目は、年次有給休暇の申請時に取得理由を不問にすることです。
 本来、年次有給休暇は理由を伝える必要もなく取得できる労働者の権利ですが、申請時に理由を必須としている企業はまだ多くあるようです。取得理由を不問にするだけで取得日数が増えた企業の事例は、私も複数、目にしています。

 2つ目は、役職者や上司が積極的に休暇取得をすることです。
 上司が休暇取得しやすい雰囲気をつくると部下も使いやすくなり、部門全体で休暇取得しやすい雰囲気が作れます。

就業規則の改訂等で「1時間単位の取得」「計画的付与」も可能に

 次に、多少の手間はかかりますが、導入しやすく、導入企業も比較的多い社内制度を2つ紹介します。

 1つ目は、年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにすることです。
 取得できる時間数に上限はあるものの、丸1日より時間単位の方が休みやすいと思う方もいるでしょうし、休暇の柔軟性も上がるためワークライフバランス実現の観点でも好評です。
 なお、この制度を導入するには、労使協定の締結と就業規則等の改訂が必要です。

 2つ目は、年次有給休暇の計画的付与です。
 本来、年次有給休暇は従業員の希望日に取得するものですが、この制度を導入すると、従業員が自由に使える休暇を5日残せば、残りは申請せずとも事前に企業が指定した日に取得してもらうことができます。

 導入企業では、年末年始等の長期連休の前後や飛び石連休、閑散期を指定しています。年次有給休暇の年5日取得が義務化されてから、この制度を導入する企業は増加傾向にあるとのデータも出ています。

 こちらも、労使協定の締結と就業規則等の改訂により導入が可能です。労使協定には、年次有給休暇を取得してもらう具体的な日付をすべて記載し、従業員にはその通りに休んでもらいます。

業務改善等で休みやすい職場へ

 とはいえ、このような制度を導入したり、社内の雰囲気を変えたとしても、誰かが休むと仕事が回らないようでは、年次有給休暇の取得は難しいです。上に挙げた施策だけでなく、業務改善や増員、配置転換等を組み合わせることでより休みやすい職場へと生まれ変われます。

 そこで次回は、業務改善の方法の1つでもある、システム導入についてのポイントを解説します。

筆者紹介 いろどり社会保険労務士事務所 代表内川真彩美氏

内川真彩美氏
内川真彩美氏

特定社会保険労務士。約8年半、IT企業でシステム開発に従事した後、社会保険労務士として開業。現在は前職の経験を活かしながら、企業の制度設計や働きやすい組織作りの支援を行っている。企業ウェブサイトや雑誌などへの執筆、講演多数。

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※この特集は、「やっちゃばジョブ」を運営する農経新聞社の『農経新聞』掲載記事を再構成したものです。

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