【初心者向け】「競り」の割合は2割以下に

競りの割合は減少し2割以下に コラム

 自治体や卸売市場のWebサイトでは、「競り(せり)で仲卸や小売商に販売しています」「公開の場で、競りで公正な取引をしています」などと紹介されることが多いと思います。

 いまでも卸売市場がニュースで取り上げられるときは、威勢の良い競りの様子が映ります。ただ、すでに「競りが主役」の時代ではありません。現在では競りは2割以下と、かなり少なくなっています。

スーパーの台頭などで競りは衰退

 競りは、大正12年3月に制定・公布された「中央卸売市場法」で、取引の原則とされました(現在は自由化)。

 農林水産省のデータによると、青果卸売市場全体における競り取引の割合(金額ベース)は、1985年度には74.8%もあったのですが、2020年度には14.5%まで減少しています。

 ちなみに、水産卸売市場(注:漁港の産地市場を除く消費地市場)では、元々競りの割合は低く、1985年度で37.2%。直近の2020年度はさらに下がって12.4%。その大半は鮮魚で、冷凍や塩干加工品はほとんど競りでは取引されていません。

 競りが少なくなったのは、まずは都市部の市場です。その理由は、青果商に代わってスーパーが増えたこと。

 競りの終了後に商品を配送するのでは開店時間に間に合わないし、安定して売場に商品を置くには、競りに頼りすぎない計画的な仕入れが必要です。また大型産地と大型量販店を結ぶ商談は、シーズン通じて計画的に行うため、日々の価格変動は馴染みません。

 一方、地方都市などの中小市場では、出荷者、とくに大型農協から直接委託を受けることができず、大都市の大きな市場から買付けて仕入れる「転送受け」が多くなっています。一般の商品のように原価がはっきりしているため、競りではなく相対販売となります。

産地市場や高級品は競りで

 さて、競りの割合は下がっていますが、全くなくなるわけではありません。なかでも産地に近い、あるいは産地の真ん中にある「産地市場」では、引き続き全量を競りで取引するところも珍しくありません。

 これは、個人農家が出荷する「個選品」は、新鮮ではあるものの、出荷量や品質が安定しない面もあるため、現物を見ての評価が必要なためです。

 また、東京など都市部の大型市場でも、静岡県の温室メロンや宮崎県のマンゴーなどの高級品は、少しの品質差で価格が大きく異なるため、競りで取引されます。

タイトルとURLをコピーしました