働き方改革の実践 まずは「現状把握」から

働き方改革のポイント3 コラム

いろどり社会保険労務士事務所
代表・内川真彩美氏

選ばれる会社になる 働き方改革のポイント3

 前回までは、働き方改革の概要や目的を見てきました。
 ひと口に働き方改革といっても内容は多岐にわたるため、実際に何から始めればよいか悩む方も多いことと思います。そこで今回は、働き方改革の第一歩として、まず初めにやるべきことを紹介します。

この記事のポイント

◎まずは社内の現状把握から。「数値化」することで問題点がより明確に。

◎問題を解消するメリットを考えてから、原因を特定しそれに見合う対策を行う。

◎経営陣や担当者の想像で進めるのではなく、従業員ひとりひとりの本音を引き出すヒアリングを実施する。


まずは社内の現状を把握するため、問題を「数値化」

 働き方改革の最初の一歩は、社内の現状を把握することです。

 私は働き方改革をよくダイエットに例えます。今の自分の体重を知らなければ、目標体重も決められず結果が出たかもわかりませんし、痩せたい理由や期限によってその方法も異なります。


 友人がダイエットに成功したと聞くとつい真似したくなりますが、金銭的・時間的余裕の有無や元々の体重・体質、家族の協力、生活スタイル等が異なれば、全く同じ方法をとることも、全く同じ結果を出すことも難しいわけです。
 いきなりジョギングを始める前に、まずは自分の体のことや予算やスケジュールを認識しましょう、ということです。

 そういうわけで、まず現在の社内の問題を数値で捉えましょう。
 残業時間、離職率、休暇取得率等、自社で問題だと感じていることを数値化してみます。このとき、「問題だと感じていること」を従業員にヒアリングすると、より現場に即した問題を把握できます。

 漠然と「残業時間が多い」と感じていても、実際の数字を出してみると「特定の部署だけ多い」「3年前から極端に多くなっている」のように、より細かな問題点が見えてきます。
  数値化することで、その問題は「誰かの感覚」ではなく、関係者全員で共有可能な「共通の問題」にできることも大きなメリットです。

なぜ問題を解消したいのかを考え、原因を特定した上で対策を

 次に、「なぜ問題なのか」「なぜ解消したいのか」を考えましょう。例えば、残業が削減できるとどのようなメリットがあるでしょうか。
 このとき企業にとってのメリットだけでなく、従業員にとってのメリットも考えます。この部分が、従業員を改革に巻き込むときの強いメッセージになります。

 その後、それらの問題が「なぜ起きているのか」を考えましょう。
 「なぜ特定の部署だけ残業が多いのか」「なぜ3年前から残業が増えたのか」といった具合です。

 理由によってとるべき対策は異なります。例えば、特定の業務の負荷が高いなら、その業務を改善できないかの検討をすべきでしょう。

 他業界では、基本給だけでは生活が苦しいので残業代欲しさに残業しているという事例もあります。この理由だと、業務改善をしたところで残業は減りません。

現場の従業員ひとりひとりの本音を引き出す

 問題が発生している理由は、経営陣や担当者の頭の中だけで想像しても無意味です。現場の声を聴きましょう。
 ひとりひとりに面談を行う方法が、詳細を深堀してヒアリングできるため一番効果的です。

 ただし、直接だと本音を言いにくい雰囲気であれば、匿名のアンケートをとるのも良いです。重要なのは、その意見を否定せずに聴くことです。本音を把握できなければヒアリングの意味はありません。

 また、なぜヒアリングをしているのかを伝えましょう。理由がわからないヒアリングは本音を言いにくいです。

「理念・方針」の明文化で改革の方向がブレるのを防ぐ

 私は社内制度や社内規程の見直しを依頼されると、経営陣や担当者と一緒に、今回紹介したような内容をまず明文化します。いわばその企業の働き方改革の「理念・方針づくり」です。

 今後の判断に迷ったときや議論がずれそうなときに、あるいは定期的に全員で見返すことで、改革がおかしな方向へ進むことが少ないと感じています。

 さて、働き方改革の一環で年次有給休暇の5日取得が義務化され早4年が経ちますが、当初、多くの企業が頭を悩ませたことと思います。
 そこで次回は、休みを取りやすい仕組み作りのヒントを紹介します。

筆者紹介 いろどり社会保険労務士事務所 代表内川真彩美氏

内川真彩美氏
内川真彩美氏

特定社会保険労務士。約8年半、IT企業でシステム開発に従事した後、社会保険労務士として開業。現在は前職の経験を活かしながら、企業の制度設計や働きやすい組織作りの支援を行っている。企業ウェブサイトや雑誌などへの執筆、講演多数。

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※この特集は、「やっちゃばジョブ」を運営する農経新聞社の『農経新聞』掲載記事を再構成したものです。

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