食を支えるインフラである卸売市場では、その役割ゆえに働く時間が長くなりがちです。主な原因は、荷物の入荷・販売・受発注の時間が、それぞれ早朝と午後~夕方に分散されていることです。
取引先の事情もあるため、なかなか自社だけでは解決しにくい問題ではありますが、最近は働き方改革に取組む会社が出てきており、さまざまな工夫が生まれています。いくつかの例をご紹介します。
夕方以降の発注までの待ち時間を解消
まずは、コロナ禍を機に販売先に協力を要請した、ある仲卸の事例です。
この会社は、「それまで夕方5時以降だった発注時間の繰上げを要請してみたら、快く理解してくれた」のだそうです。
販売先のスーパーでは、店舗から本部への発注締切はもともと午後3時だったのですが、「仲卸が5時でいいといってくれるから」と、半ば〝惰性〟で5時にしていただけでした。実は取引先も、発注を早くし帰宅時間を繰上げたかったのです。
仲卸は「もっと早くお願いすればよかった」と振り返っていました。
セリは元競り人や役員で 営業員の早朝出勤禁止も
次に、卸の取組み例を紹介します。
卸売業者では、セリよりも相対取引の割合が増え、日中の営業活動の比重が高まっています。一方で、早朝のセリが行われ、卸の営業員も早朝~夕方あるいはそれ以降までの勤務になってしまう場合があります。
これに対応するため、元競り人を登用する会社が出てきました。
退職した元競り人を早朝だけ短時間雇用し、慣れ親しんだセリだけを行ってもらうのです。役員がセリを担当する会社もあります。
労力を分散することで、長時間労働の改善に取組みました。
この方法を取り入れた卸では、「営業員の勤務開始時刻前の早朝出勤の禁止」を打ち出しました。「それでも業務は滞ることなく回っており、顧客サービスが疎かになっているわけでもない」のだそうです。
システム化で人の負担を軽減
また、受注対応のシステム化に取組む会社も増えています。
これまでは人手を雇って夜間の受注部隊を組織していたところを、人の手に頼らずFAXなどを自動データ化したり、モバイル端末による受発注業務に変更しています。
こうした労務環境の改善は、働く側にとってはモチベーションを保ちつつ長く仕事を続けるために、雇用する会社側にとっては人材の確保や改善で生まれた労力を本来の業務や新規事業に傾けてもらうために、急務となっています。